
会津若葉幼稚園 実践発表会開催レポート
記念講演 『科学する心を育てるには』
講師 いわき短期大学客員教授 西久保 禮造 先生
「考える」ことの大切さ
科学的な心を育てるためには、まず子どもがその物事に感動しなくてはいけないわけです。心を揺さぶられないと、行動は起きないからです。
だから、感じて、触れてみるということからこっちへ心が向くかもしれないし、あるいは、感じて、心が動かされて、触れていくようなこともあるんだろうと思います。
いずれにしても“科学的な心を育てる”には、まず「考える」ということが大事なんですよね。
「考える」力のもとになる知識・経験
子どもは、「考える」という場合に、やはり自分がいろいろ経験したこと、それから今まで何らかの形で知識として持っているもの、それを元に考えるんです。
研究資料にあった“木が倒れている”場面で、自分の生活体験や知識から、「赤ちゃんの木だからかな」「水が足りないのかな」って考えていますが、実際にはそういうことで倒れるのかって言うと、雪の重みもあるだろうし、あるいは風が強いために倒れることもありますよね。これは子どもの体験としては無いから、出てきません。
でもやはり、自分の貧弱な体験から子どもは考えようとする。そこはやはり大事にしていかないと、「考える」ということは出てきません。
子どもの「考える」基盤になるようある程度知識を入れていかなくちゃいけませんが、あんまり入れすぎてしまうと考える子どもは育ちません。
先生方は科学的な知識を持って、子どもの知的なレベルでうまく小出しにできれば、子どもの科学的な心が育っていくのではないかと思います。
園生活の中の「科学する心」
それから、若葉幼稚園の森や岡山幼稚園の畑のような自然環境がなかったら子どもの科学する心は育たないというわけではなく、幼稚園の生活の中でたくさんあるのです。
まず「楽しい」と感じることが大事ですが、それで終わって情緒的に捉えただけでは駄目なんですね。
方法を言うのではなく、偶然できたことや先生が意図的にやっていることに向かって、どうしたらこうなるか子どもが色々試していく。活動の中で先生がそういう刺激を与えていかなかったら、子どもの考える力は育たないのです。
遊びの体験を通して「考える」
- シャボン玉(大きく吹く方法は?友達と合体させるには?)
- 船作り(早く真っ直ぐ進むには?)
- 凧揚げ(凧が揚がる風の向きは?)
- 雪遊び(雪って重いんだ!) など
どんな活動でも、3才は3才なりの考え、4才は4才なりの考え、5才は5才なりの考え。そういうことを積み上げていかなければならないのです。そしてそれは結局、先生がどんな刺激を出すか、子どもがそれによってどう心を動かされるか、ということです。
幼稚園では、物理的な事象っていうのがけっこうあるんですよね。ただ先生方がどうしてもそれを情緒的に受け止めてしまうために、いい活動なのに子どもが考えるという方向にまで持っていかれず終わっているというのが現状なんだろうと思います。
「科学する心」と人とのつながり
5才では、科学する心を育てる場合に、友達とのつながりが重要になってきます。5才になると、友達との「かかわり」ではなく「つながり」なんです。やっぱり考える力を育てるには、心がつながっている友達、これが刺激になっていくというわけです。
ただ友達がいるのではなく、ある程度心のつながりがある。グループ活動などを通して、1人で考えていてもなかなか考えられないけれども、特別な仲の友達がそれを受け入れたり、反論したり、そういうことによって考える幅が広がっていき、芯が深まるということがあります。だから考える子どもを育てるには、特に5才では友達関係をどう育てるかがとても重要になってくるのです。
それともうひとつ、考える力を育てるために、子どもが先生を信頼し、先生が子どもを信頼しているという信頼関係が育っていることが必要です。
子どもは先生と心がつながっていれば、先生の言うことを素直に受け止められるし、心が揺さぶられて、失敗しても頑張っていける。そういう先生との関係が育ってこないと子どもが伸びる力を持っていても、大きくは伸びない。友達とのつながり、先生とのつながりを大切にしていかないと、科学する心というのは育ってこないと思います。
幼稚園の生活の中では、いろんな状況で子どもが考える場面はいっぱいあるんです。あとはそれを先生方が取り上げるかどうかなんですね。
先生にも「科学する心」を
ノーベル物理学賞をとった小柴さんの本にあったことですが、「子どもの科学する心を育てるなら、先生が科学する心を持たないと駄目で、それが一番前提にあるもの」だそうです。
どうしても幼稚園の先生は情緒性に流れていく。だからそうじゃなくて、先生が科学する心を持たなければいけないんです。
女性の先生の場合、お料理を、どんな素材をどう使うか考えながらやることが科学する心につながっていきます。
子どもは自分が体験したことから考える材料を見つけて浮かび上がらせてくるわけですから、なかなか「考える」というところまでは行きにくく、幼児期に科学する心を育てるというのは本当にたいへん難しいことですが、子どもの気づきやつぶやきを先生が拾って、認めていくということを考えていただければ、科学する心を育てることにつながっていくと思います。
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