「特別なことは何もしていませんが……」と控えめに語られる三根校長先生。その反面、「教育は工夫がなくなったら、終わりですよね。」と常に向上心を持ち続けられる強い眼差しがとても印象的でした。また、ご趣味はなんと社交ダンス!?ということで、とてもスポーティーで軽快な校長先生です。
今回は2006年度子ども科学教育プログラム最優秀校 泉谷中学校 三根豊治校長先生に伺いました。
泉谷中学校に着任して
本校に着任して感じたのは、荒れた状況からずいぶんと回復してきたということでした。その一方で、気になったのは、朝、子どもたちが登校するときの表情が暗く、「学校がおもしろくないのかな?」と感じられた点でした。
市内には「本校は荒れた学校である」という悪い評判がありましたので、これでは、子どもたちが一番かわいそうだと思いました。
そこで、私は二つの目標を掲げました。一つは、子どもたちには泉谷中学校で三年間を過ごして良かったという思いを持って卒業できるようにすること、もう一つは、地域や保護者の方々からの信頼を回復することです。
口で言うのは簡単ですが、先生方の熱意と努力、保護者や地域の方々の協力が必要です。そして、なによりも子どもたちの力がなければ、決して実現できないことです。
「挨拶運動」から見える、学校を支える大切なもの
本校の出勤時間は8時ですが、職員全員が7時45分には必ず来ています。それは、本校の職員全員が、昇降口付近、校門のところで、雨が降ろうが何しようが、毎日、登校してくる子どもたちを「おはようございます」と迎えるためなのです。これが、全くこちらから強制したものではないにもかかわらず、毎日毎日全員が取り組んでいるのです。そういう教職員の意気込みが、私は一番うれしく思いましたし、このような先生方と一緒なら、絶対に大丈夫と確信しました。この先生方の気持ちが、子どもたちの心を動かし、保護者や地域の方々の心を動かす原動力となっていると思います。
この「挨拶運動」に到るまでには、前任の校長先生が取り組まれたことの積み重ねがとても重要でした。泉谷中学校を回復させるためにはどうすればよいかについて、保護者の方々と半年間かけて話し合いました。その結果、まずは服装から取り組もうということになり、子どもたちへの説明、保護者の理解と協力を得ることなどにじっくりと時間をかけて取り組みました。このことが教職員と子どもたち、教職員と保護者との信頼関係を築く礎となったと思います。この取り組みの中で、自然に生まれてきた「子どもたちへの声かけ運動」が、現在の「挨拶運動」につながっているのです。
当初、私は「挨拶運動」の効果をあまり期待していませんでした。しかし、着実に変わってきている学校を目の当たりにして、挨拶がいかに重要なことであるかを実感しています。
子どもたち一人一人が光るために
私は子どもたちに「何か一つで良いから、夢中になって取り組めることを探し、徹底して取り組みなさい」と常に投げかけています。また、子どもたちが提案し、実施することを推進してきました。その結果が「新生泉谷中」という合い言葉を生み出し、今年度からは「誇れる泉谷中」という合い言葉のもとに取り組み、各委員会での新しい活動などという形で着実に表れてきています。
中学校では、部活動や、教科、あるいは、行事など、子どもたちが光る場があり、子どもたち一人一人が光ることで、学校に活気が生まれます。
本校では、挨拶に代表されるマナーや規律を身につけることに加え、教育活動の基本である「授業」をより充実させることに重点を置いて取り組んできました。今回最優秀プロジェクト校に選ばれたソニー子ども科学教育プログラムでは、理科の先生方が中心となった活動が、そのきっかけとなりましたが、最終的には、全教職員、子どもたち一人一人が充実した学校生活を送ることを目指す中で受賞に到ったと考えています。


保護者、地域からの信頼を深めるために
子どもたちの良さを引き出し、見える形にして行くことが基本ですので、そのためにどうすべきかを決める際に、保護者の方々の意見をお聞きすることを大切にしました。具体例としては、「プロジェクトi」というプロジェクトを年に数回開催し、保護者の方々から直接ご意見を伺う機会を設けました。
また、その結果としての子どもたちの姿を積極的に保護者や地域の方々に伝えることに取り組みました。漠然と良くなったと伝えるのではなく、修学旅行で地元の方々に褒められたこと、部活動などで成果を上げたことなど、具体的な形で子どもたちの良さを表現することを大切にしました。伝える方法は様々ですが、保護者だけでなく地域の方にも回覧されている学校便りや地域の会議などを大いに活用しています。また、地域の雑誌にも学校を紹介してもらえるよう積極的に働きかけています。
ソニー子ども科学教育プログラムで毎年着実に成果を上げ、最優秀プロジェクト校に選ばれたことは、保護者や地域の方々からの信頼を得る上で、大変大きな影響がありました。教職員をはじめとする関係者やPTA、子どもたちが取り組んできたことの成果を具体的な形で示すことの大切さをあらためて感じています。


