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どうしました?
内藤寿七郎先生の育児相談
内藤 寿七郎
(ないとう・じゅしちろう)
愛育病院名誉院長
日本小児科医会名誉会長

子育て情報誌『EDA』( 2004年3月号で終了)に1998年1月号から掲載された「内藤寿七郎先生の育児相談〜どうしました?〜」のバックナンバーです。子育て中のご両親へ「内藤先生からのあたたかいアドバイス」にあふれています。ぜひ、ご参考にしてください。

内藤先生の育児相談室・バックナンバー

食物アレルギーの抗体ができないように
お母さん 1歳1カ月の男の子を持つ母親です。寒くなると、口の周りや頬のあたりがカサカサになり、かぶれてきます。薬をつけると少し良くなりますが、つけないと、またひどくなる、というのを繰り返しています。

昨年の冬も今ほどではありませんが、同じような症状でした。かゆ痒みはあまり強くないようですが、良い治療法があればお聞かせください。
内藤先生 はい、分かりました。ところで、ご両親にアレルギーはおありですか。
お母さん 母親の私にアレルギーがあります。花粉症ですし……。
内藤先生 そうですか。お子さんの乳児期の栄養は何でいらっしゃいましたか。
お母さん 生まれてから生後8カ月までは混合栄養でした。今は完全に離乳食ですが、時々ミルクもあげています。
内藤先生 ご両親のどちらかがアレルギー体質であれば、約50%くらいの割合で、子どもにその遺伝子が伝わっていくと言われています。

お子さんの場合のように、生まれてすぐから混合栄養にしますと、「ヒト」のタンパク質と異なる牛のタンパク質をそのまま、あるいは1個1個のアミノ酸まで消化することなく吸収してしまうんですよ。アミノ酸の1個までも分解して吸収すればいいんですけれど、新生児、乳児期の腸は残念なことに、タンパク質を十分、分解(消化)しないで、そのまま吸収してしまいます。そしてそれが結局「ヒト」以外のタンパク質ですと、特別に反応してしまうもの、すなわち抗体を作ってしまうんです。

抗体ができてしまうと、2度目、3度目に「ヒト」以外のタンパク質が身体の中に入っていった場合の反応の一つとして、神経が興奮することもあるのです。その興奮の結果、アトピーができたり、あるいは寝つきが悪かったり、眠りが浅かったりなどの現象が出るんです。

(お子さんを見ながら)口の周りのカサカサがそうですよ。かわいそうにね。これは、軽いアトピーです。もうお誕生は過ぎましたよね。

お母さん はい、過ぎました。
内藤先生 お子さんには「ヒト」以外のタンパクが多く身体に入らないほうがいいです。そこでお母さんにお願いがあるのですが、これから1年間、ミルクを1日1回にしていただきたいのです。粉ミルク8杯を200ccで溶いてあげてください。お子さんのアレルギーは軽いので、それだけで随分違ってくると思います。
お母さん できれば、ミルクをやめたほうがよろしいのでしょうか。
内藤先生 おやめになっても構いませんが、フォローアップミルクは牛乳に比べて、量が多くなければ大丈夫ですよ。
お母さん では、牛乳はダメなのですか。
内藤先生 牛乳のほうが、アレルギーを起こす力がいくぶん強いようです。
お母さん そうですか。それでは、まだ粉ミルクのほうがいいのですか。
内藤先生 粉ミルクを作るのには加熱が必要ですので、抗原性がやや少なくなると思います。生の牛乳が一番アレルギーを起こしやすいです。牛乳は1年半くらいたってから少しお湯を加えたりして薄め、少量ずつから試してみましょう。
お母さん お薬はいかがでしょうか。
内藤先生 薬はつけてもいいのですが、ステロイドホルモンの少ないものを用いてみてください。

お母さん 今は、ワセリンのようなものを使っています。
内藤先生 それくらいだったら大丈夫ですよ。ただ、お子さんが小さいと舐めますから、気をつけてくださいね。食べ物からきているアレルギーの時は、その食べ物をお子さんにあげないようにしてくださいね。と言っても、それは自分勝手にやらないで、必ず医師(できればアレルギーに詳しい小児科医)に指導を受けましょう。ミルクを飲まれている間は「8杯の200cc」を守ってください。

卵も毎日、あげないでくださいよ。今は大丈夫でも、後から鶏卵アレルギーが現れてくると困りますから。卵は栄養価が高いので、つい使ってしまいがちですよね。どうしても卵を使いたい時は、うずら鶉の卵を固ゆでしたものでもいいんです。多少、違いますよ。

今の時期は食物アレルギーの抗体ができ ないようにしてあげましょうね。
お母さん はい、分かりました。ありがとうございました。
   
  内藤先生からのメッセージ
  【子育てから始まる世界平和】
  今月で内藤先生のこのコーナーも最後となりました。今、世界は不穏な情勢です。そこで、常々、先生がおっしゃっている願いをお伝えします。  

まだ、言葉の発達が十分でない幼児期にも、すでに反抗心というものが湧いています。それは、大人たち、特に親が知らず知らずのうちに我が子に植えつけているのです。子どもに反抗的な言葉が少しでも表れると、親は「何事ぞ」と高圧的に押さえ込もうとしがちです。けれども、押さえ込もうとすればするほど反抗心は強くなります。  

幼児は、親が子どもに語りかける時のほんのちょっとの言葉づかいの違いによって、自分が親から否定されたのか、それとも容認されたのかを感じ取ります。その結果は、10年後、大きな違いとなって表れます。思春期に起こるさまざまな問題は、すでに2歳の時に、その下地ができあがっている可能性が大いにあると思うのです。  

1歳半からの1年間、子どもの自我を大切にし、認めてあげること、潜在している自制心を引き出してあげることを世界中の方々に、ぜひとも実行していただきたいと願っています。こうして、お子さんを育てていただければ、無用な嫉妬や、人と争う心を持たない大人になるでしょう。そうすれば、宗教や民族の違いによる問題も、戦争という手段を用いなくても解決できるのではないでしょうか。  

世界平和は、お母さん方ひとりひとりの子育てから始まります。どうぞ、ゆっくりお子さんを育ててあげてください。
   
 
(『EDA』99.12月号掲載)



内藤 寿七郎(ないとう・じゅしちろう)
1906年東京都に生まれる。東京大学医学部卒業。同大小児科教室勤務を経て、愛育病院小児科部長。現在、愛育病院名誉院長。日本小児科医会名誉会長。幼児開発協会理事。1992年、日本人として初めてシュバイツァー博愛賞を受賞。著書は『育児の原理』『若い両親へ』『内藤博士の育児相談』ほか多数。



■内藤寿七郎先生のご本『子どもの花が育つとき』を紹介します
EDAの育児相談でもおなじみの、育児の神様、内藤寿七郎先生がされている「EDAの育児相談」が、素敵な本になりました。子育てをするお母さんの心をゆったりさせてくれるのは、小児科医としての70年の歴史でしょうか? お子さんが寝ている時、ひとりでおとなしく遊んでいる時・・・・・・お母さんがほっとできる時間に、1行、2行と読み進めることができる1冊です。


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